デス・ゾーン 河野啓 集英社
読んでいて理解不能の連続で、決して気持ちの良くなる内容ではない。
オーソドックスな登山家たちから見ると理性を失った夢想家か、詐欺師にしか見えないのは無理もない。とはいえ、理想を語り熱心に夢を語る姿勢は、山をよく知らない人々から登山界の重鎮まで引き込んでいく力を持っていたことは、否定できない。自分から実現不可能な計画を打ち出し、協賛者から金を集める。そして登頂に失敗する。その繰り返しは次第に引き返すことのできない死へ向かったのだろう。心ある登山家やライター達がいくら警告しても聞く耳を持たなかったのはなぜなのか?
『夢』に賛同する応援者、彼を良いだけ利用するマスコミ(特にテレビ局関係)、売れてきた名前を商売に結び付ける企業経営者たちが、美味しい都合で絡み合うのは地獄絵図である。
あれだけ持ち上げたのに、栗栖が死亡すると皆知らないふりして逃げていった。
読むことを勧めたくなる本ではないが、理不尽な世の中を知らなければ生きてはいけなのも事実だ。二度読んだが、もう読みたくはない。
デス・ゾーン 河野啓 集英社