高瀬ダム~裏銀座~新穂高温泉縦走 2024年

北アルプス裏銀座縦走 2024年7月

高瀬ダム~烏帽子岳~野口五郎岳~水晶岳~双六小屋~鏡平小屋~新穂高温泉 

2024年7月21日~27日

7月21日(日)
丘珠空港11:45~FDA224~松本空港13:25~シャトル便~大町15:50

松本空港から大町までのシャトル便は今日も私一人であった。
本来バスが運行するはずだが少人数の場合タクシーの出番となる。普通、松本空港から大町までのタクシー料金は¥26,000を超える。自分自身は何の得をしているわけではないが、それがたったの¥2,500なのだから申し訳ない気がする。
複数乗車なんてあるのだろうか?採算は全く取れないだろうに、実施している理由は行政の補助があるからに違いない。

7月22日(月)
大町駅バス5:15~七倉山荘6:00~タクシーと歩き~高瀬ダム7:00~濁川丸太橋7:23~屈曲点8:24~三角点10:20~烏帽子小屋11:51小屋から前烏帽子岳 1H

七倉山荘までのバスには15人程乗車したので、ずいぶん人気のようだ。
高瀬ダムまでの相乗りタクシーに4人乗車。一人当たり割り勘で500円程度とリーズナブルだ。崖崩れで不通区間は1.4kmヘルメットを被り歩く。
ダムから登山口までの歩きは暑いのでかったるいし、本来歩く必要がないのだから無駄である。とは言え、七倉ダムから高瀬ダムまで歩いている人が、何人もいるのだから驚く。恐らく最低でも一時間はかかるだろう。

      高瀬ダムトンネルを抜けると長い吊り橋がある

大雨が降るたびに流されて落ちてしまう濁川に、立派な丸太橋が掛けられていた。つい4日前のことらしい。橋がなくてもそれほど水量がなければ危険は感じないが、もし大雨が降った直後には渡れない可能性が大きく、ブナ尾根を下山するのは博打みたいな気がする。
もっとも、火急すみやかに東京電力リニューアブルパワー㈱が対応してくれるのだがビバークの準備は用意しておかなければならない。

 大雨が降るとすぐ流される丸太橋  ないと下山時に非常に困るだろう

            ブナ立尾根中間地点

ブナ立尾根は評判とは裏腹にとても歩きやすい。登山口の12番札から始まり、烏帽子小屋の0番まで減っていくようだ。階段やハシゴの類は意外に少く、つづら折りが多ぃ。確かに急傾斜ではあるし、1400m程登るので大変では有るが、木立に覆われているので意外と涼しい。前後して歩いている登山者もあちらこちらで休憩だ。11:40には烏帽子小屋には着く。

      烏帽子岳は槍ヶ岳より格好いいのではないか

     定員30人と北アルプスでは最小の部類だろう

木立に囲まれた本当に素朴で質素ながらフレンドリーな烏帽子小屋
烏帽子岳には行くかどうか迷ったが、前烏帽子岳まで行き、写真を撮って良しとした。ここで体を休めておかなければ、次の日から槍ヶ岳まで大変だからね。
烏帽子岳は高くはないけれど三十度の鋭角で空を突いている。えらく恰好が良い。反対の針ノ木小屋、蓮華岳から見た時には烏帽子そのものの形に見えていた。
 昨年登った七倉岳から不動岳を経過し、烏帽子岳までの厳しいルートが丸見えだ。特に不動岳付近はルートの崩壊が激しく、消失していると言っても過言ではない。

   不動岳付近はルートの崩壊が激しく、消失していると言っても良い

鋭角の烏帽子岳と崩壊しつつある船窪、不動岳はハードでデンジャラスなルートだ。それでも、たまにここを好んで歩く人がいることに感嘆せずにいられない。
私も若かったら絶対に行きたいし、今でも興味はあるのだが、船窪尾根とブナ尾根の両方をこなさないとならない現実に躊躇してしまう。船窪岳~烏帽子岳が繫がれば、蓮華温泉から新穂高温泉までの後立山、裏銀座縦走ルートほぼコンプリート出来るのだが、どうだろう。
充実感は今回の裏銀座の数倍はあるに違いない。
部屋で荷物の整理を終えた後、小屋の前に出てみると後期高齢者75歳が4人集まっていた。その仲間に入り与太話をする。あまりに暇な者たちは、イワギキョウが咲き誇る小屋の前でたむろし、通過する登山者にちょっかいをかけるという迷惑行為を行った。家にいるときは誰にも相手をしてもらえないのが想像つく。途中土砂降りになり引っ込むが、天気は回復、また外で日向ぼっこだ。 
やってくる登山者は歩き慣れているようで、この辺りには初心者は皆無のようだ。
やはり地味だし、大変だし、日数もかかるからね。ただし、百名山自慢やパタゴニア、キリマンジャロ自慢者にはには閉口した。自分は気が付かないだろうけど、つい口に出るんだな。多分ですけど家族や職場の誰も山の話を聞いてくれないのだろう。
気持ちはよく分かるけどね。自分も気をつけなければならないよ。ここまでくるとツアーは少ないようだ。少くても三泊四日は必要だし、体力も必要。金も想像以上にかかる。
自分も飛行機賃をはじめ、交通費が非常に高くつくし、小屋代が平均¥14,000と高級ホテル並みだ。とはいえ節約のために、テント装備ではザックの重量は水を含め、15kgを楽に越えてしまう。今回は6kgでやっとだから、テントでは到底上高地に到達しない。夕食はレトルトカレーと地味だがご飯だけは腹いっぱい食べた。宿泊者は16人とアットホームでちょうどよい。

        なんと夕食はレトルトカレーだがうまい

ここではスマホの充電は無料なのでうれしい。現代ではスマホが山行の命運を左右するくらい重要なギアとなっている。モバイルバッテリーも当然必携だ。

7月23日(火)
烏帽子小屋4:35~三つ岳5:53~野口五郎小屋7:44~野口五郎岳8:05~真砂分岐8:41東沢乗越10:01~事故地点10:30~水晶小屋10:54   小屋手前で滑落事故有り、長野県警ヘリ飛来しレスキュー

天気が良いので早くに小屋を出る。テント場を通過する登山道はなだらかで歩きやすい。朝日は思ったより美しくない。少しがっかりしたが、雲はほとんどなく、展望は槍ヶ岳、針ノ木岳、蓮華岳、鹿島槍、水晶岳、双六岳、三俣蓮華岳、鷲羽岳、立山連峰、餓鬼岳など見渡せる限り全てが見えた。
特に、槍ヶ岳の手前に伊藤新道側の赤茶けた硫黄尾根が見えた。今回行くつもりだったので感慨深い。しかし、西鎌尾根は相当長く大変そうだ。明日の天気が気になる。

    水晶小屋から双六岳へ続く尾根は裏銀座の中間地点だ

昨日夜の天気予報では明日雨が降るらしい。少なくても今日一杯は良いとのことだ。まあ、明日のことは明日になってから考えればよい。
三つ岳を過ぎてから、天気は良いのに風が強くなってきた。軽量の私にとって風は敵だ。
南へと向かう縦走路には登山者が意外に多く10人を超えるのではないか。
梅雨が明け最初の日曜日だから当然か。歩くのが遅い私がそれらの人々を追い越して進んでいくのが自分でも疑問に思ったが、何のことはない、ザックの大きさが格段に違うのだ。


ヘルメット、マット、テント、シュラフ、食料、着替え等重そうだ
人のザックを見ると70リッターくらいにビッシリと詰め込んでいるもの、重いさ。テント泊ならわかるが、小屋泊で何を持つのか?多分ですけど着替えをしこたま持ち、食料を行動日の何倍を持つのだろう。中身はわからないので重さは当然不明だ。しかし軽くはないのは歩くスピードでわかる。私は水を含めて6kg,他はおそらく15~18kg程度はあるだろう。もしかすると20キロ超えか?
パワーがない私は30リッター水込みで6キロ以下だから動けるのだろう。同じ重さなら疲労困憊でリタイア確実だ。ただし、ツエルトしか持たないので緊急時に弱いかもしれない。ウルトラライトとまではいかないにしても軽さは有利だ。
ただし、嵐などのピンチに追い込まれた場合に対処できるかどうかが問題ではあるし、何かあった場合非難の的になるに違いないが。
鏡平小屋でザックの中身について隣の人と話になったのだが、私は靴下一足とパンツ一枚のほかは、着替えを持っていないと言うとあきれた顔をしていた。
自分の装備は必要最小限だがシャツが一枚足りないかな 水なしで5kg


野口五郎岳手前で雷鳥がいた。去年から三回連続雷鳥にお目に掛かれるのでうれしい。しばらくして私を追い越していった人が引き返してきた。
?と思ったが、明日の天気悪化を懸念して引き返すとのことだった。
私は時間があるので停滞、エスケープを織り込み済みなので予定通り水晶小屋へ向かう。
今年の夏は本来黒部川下の廊下へ来るつもりだったのだが、能登地震の影響でトロッコ列車が不通となり、阿曽原温泉の今年の営業がなくなったことに加え、代わりに考えた伊藤新道がこれまた落石で第三吊り橋がダメージを受けたのだ。
そのうえ7月の湯俣川は水量が多く、一人では非常に危険であるとの情報を得て、本来来る気のなかった裏銀座本通りを計画したのだ。
うまくすると蓮華温泉から槍ヶ岳、上高地と繫がり、自分の中の大縦走がコンプリートに一歩前進する。ブナ尾根さえ登れば山旅を楽しむのも悪くないか。
この辺りは燕岳のような大きな白い岩が転がり、日の反射が眩しい。日焼け止めをタップリ塗ったけどどうだろう? 少し時間は取られるが、岩場は特に歩きにくくはない。真砂岳分岐辺りより少しづつルートが悪くなってきたが、危険を感じるほどではない。野口五郎岳手前に白い岩が転がり、日の反射が眩しい

            硫黄尾根の赤は良く目立つ

リッジから右手には赤沢岳、水晶岳、眼下には野口五郎沼が一望でき、左は硫黄尾根越しに見える槍ヶ岳は北鎌尾根と西鎌尾根が一望出来る
特に急峻なリッジがあるわけでも、核心部もないのだが2800m~2900mの展望稜線を6日間にわたり歩く喜びは何物にも代えがたい。山頂と稜線の高低差があまりないので楽だし、たとえ天候悪化により巻き道を選んでも気にならないだろう。

         野口五郎岳ピークから望む槍ヶ岳

野口五郎岳ピークから望む槍ヶ岳は遠い。明後日はあそこまで行くのかと思うと、疲れが倍になった。しかし、迫力のある光景ではある。時間が取れなければ行く気にならないが二三日で走破する人もいるらしい。こんな素晴らしい景色を楽しまないなんてもったいない。
北アルプスの主稜線、つまりメインストリームであるが意外に歩く人は多くない。日帰りは論外でも、二泊三日も難しい。三泊四日で普通、四泊五日でゆったりと歩け天候が悪い日があっても余裕がもてる。

水晶小屋近くになったとき、すれ違った女性から滑落者が出たけど、まだ救助されていないので慎重に通過するように言われた。近くにいた男性が滑落場所にザックを置いて通報に走ったらしい。まもなく男性登山者が現れまた滑落者の情報を聞く。問題の場所に着いたが、ここに通報者のザックが置いて目印にしたようだ。下を見ても滑落者は見えない。トラバースして行く地点は急峻で脆い。ここから落ちたとなると、少くても百メートルは超えているだろう。早く救助しなければ命に関わる。現在落ちてから三十分くらいなのでレスキューヘリは姿を現していない。水晶岳からここまで歩いてきて正規ルートを谷側に二メートル早く回り込んだものと思われる。滑った跡は見受けられなかったが、土のザレ斜面はすべると止まらないだろうと思われた。
ここは、慣れた人でなければ焦って動き落ちてしまうのも無理もない。
水晶小屋に着いて様子を見ていると、間もなく長野県警ヘリがやって来た。

      長野県警ヘリがホバリングを繰り返している

滑落者が落ちたと推定される斜面は登るだけなら良いが、下りは土砂が滑り相当厳しいだろう。疲れていたり、気分がすぐれないままに通過してしまったのかもしれない。烏帽子岳~水晶岳間は遭難事故をあまり聞かない比較的安全なルートなのだが。
落ちた地点がわからないようでホバリングを繰り返している。燃料補給のため一度引き返していったが、しばらくして戻ってきた。
場所が特定でき、ピックアップできたのは滑落してから3時間後であった。

速報では2人パーティとの事だが、同行者当人の話では船窪尾根から不動岳、烏帽子岳といっしょになり、同行しただけで、詳しいことは分からないらしい。
事故者が先行し、乗越の手前の急峻な尾根辺りでルートを外れた為、「そこは違う」と注意喚起したのだが、目を離した一瞬に、もう居なかったらしい。
直ぐに覗き込んでも見当たらず、ザックを目印に置き、水晶小屋へ通報に走ったらしい。事故者がピックアップされるまで、目撃者は相当落ち込んだ様子で、気の毒だ。警察での事情聴取もあるし、発見されるまで待たねばならないのは、山行に多大な影響があり、辛い。  
山小屋の従業員はこのような事故には慣れているのか、警察救助隊とのやり取りが適切で、間違いがない。目撃者に対しても優しく接しているのは素晴らしい。まだ若い人達でも、このような環境で働くだけあって肝が据わっている。

      水晶小屋の屋根は低く、風の影響を受けずらい

大勢の登山者が小屋の前を通り過ぎていくが、レスキューを見守っているのは小屋の従業員、目撃者そして何もすることがない私の三人だ。
登山者のほとんどは他人事に思うのだろうか?いつ災難が自分にかかるか分からないのだから、遭難事故に少しは関心を持ち、自分をいさめるようになったら良いのに。
行動食はカロリーメイトだけであった私は、おいしそうな力餅味噌煮込み汁¥1200を注文し腹が膨れた。変わったメニューがあるものだ。
小屋は風の強い地点に建っているだけあって軒先が低い。
中の大部屋は二階だが天上の梁がこれまた低く、ひっきりなしに誰かが頭をぶつける音がする。かくいう私も痛い目に遭ったのだが。
水晶岳は百名山の一つで天場がないので、やけに登山者が多く出入りが切れない。ガイドパーティ7人が五十代とみられる女性に率いられてきたのに驚く。
北アルプスでも結構深い場所に募集山行とは時代が変わったのだろう。

          昨晩に引き続きカレーライス


天気予報では昨日までとは急変し、明日は雨と風が強くなるようだ。今日はとても動く気にはなれない。明日は明日の風が吹く(本当に吹いた)
夕食は昨晩に引き続きカレーライス。もっと言えば丘珠空港でも、丘珠カレーを食しているので三日続けてカレーだ。ほかの山域でこんなことはないんだけどね。もっとも、毎日がカレーでも私は構わない。夕方になり、隣の若い人が昼間の事故者が亡くなったことを教えてくれた。互いに頷いて事故防止を誓う。
昼間、すれ違った登山者から聞いた天候悪化の情報は確かなようで、夜半より雨が降り出し、風も強くなった。
宿泊している登山者たちは皆明日の予定をどうするか話をしている。

        早朝4:00小屋の外は雨風強く、雷を伴う

7月24日(水)
朝食 5:00 水晶小屋9:00~三俣山荘11:00 2H
風雨強く9:00まで待ち、鷲羽岳頂上はカット、黒部川源流経由で
三俣山荘まで行きここで宿泊決定
意識不明登山者有り、富山県警ヘリ飛来、収容

本来、ここを5:00頃出て、今日中に双六小屋へと行かねばならないんだが、風雨強く落雷もあり、様子を見る。その間雨を突いて男性登山者が到着するも、低体温症で震えが止まらないし、顔面蒼白。山小屋従業員が手当てし回復。真夏とはいえ、風雨強ければ体幹まで冷え切り、回復不能になりかねない。
日程の都合があるのだろうが、今日みたいな嵐をつくのは厳しい。
朝食をとってから一度停滞を決めたが、予想に違い皆出ていくのでこちらも焦る。日程的に余裕があるし、新穂高へのエスケープもあるので焦る必要は本来ないが。9時まで様子を見た後、雷もおさまり停滞をキャンセルし、三俣山荘迄行くことにした。

自分では落ち着いて判断したつもりだが、やはり焦っていたのだろう、計画書をテーブルの上において忘れたしまったことに三俣山荘にて判明した。
これで水晶小屋に残留するのはガイドのパーティだけになる。
彼らは本来野口五郎岳を通過し、烏帽子岳からブナ立尾根を下山予定だが、この天候では無理だろう。彼らは、会社からの指示を10:00まで待たねばならないらしい。風が強いのでワリモ岳、鷲羽岳のピークはカット、黒部川源流経由にした。ときおり雷が鳴るので生きた心地がしない。光ってから数秒かかるので近くないのだが、やはり恐ろしい。  ワリモ分岐に行く間に向かいから登山者が来て、巻き道の方が良いことを告げられた。
ワリモ分岐から沢ぞいに降りていくが、雨は相変わらずだが、風がなくなり非常に楽になった。このルートは小さな沢に沿って降りていくがやさしい。残雪のある黒部川源流から登りになり、ここからが苦しい。黒部五郎岳や雲の原方面から登山者が結構来る。

           黒部川源流には大きな雪渓が残る

たとえゴアテックスであっても雨具の内側に湿気が籠り、風に吹かれると寒い。どんなに真夏でも濡れて吹かれると、トムラウシ山の惨事と同じになる。水晶小屋から2時間二十分分で三俣山荘に到着。予約はしていないが、水晶小屋から連絡してもらっただけにスムーズに泊まれた。

   一瞬だけ槍ヶ岳が夕日に照らされたがまもなく見えなくなった

漏れているが、着替えを持たないので震えが来る寸前であった。少なくても肌に直接触れるフリースは一枚持つべきだ。無論、雨風がなければ重りになるだけだが。仕方がなく布団に入り着干しとする。1時間ほどで乾き、食堂にてラーメンを食べた。とても美味いし、温まったのだが1800円は高いな!
後はひたすらストーブにあたりながらボーっとする。暫くして辺りが騒がしい。聞くと、到着した登山者が意識不明になったらしい。病気なのだろうが天気が悪いので、レスキューヘリが飛ぶか決まらないようだ。しばらくしてとつぜん雲が切れ、富山県警ヘリがやって来た。ローターを回しながら二人が担架を持ち、降りてきた。間もなく病人を収容、立ち去っていった。大したもんだ。

  循環器系等の病人発生でレスキューヘリが悪天の間を突いてやってきた

      三俣山荘名物のイノシシジビエカレーはおいしい

三俣山荘の売りはジビエカレーだ。展望レストランでの食事は山小屋らしく無い洒落ており、しかも美味い。残念ながら辺りはガスで覆われているので、何も見えないが。天気予報は相変わらずよくない。一瞬ガスが晴れ、槍ヶ岳が見えたが、それまでであった。
7/24 、7/25の両日にわたり日が出たのはたったの二三分余りだろうか?
このような悪天が続くのは2015年の前穂高、北穂高岳以来のことだ。
昨年も、一昨年も半日天気が悪くなったことくらいだ。

       裏銀座縦走のターミナル的拠点が三俣山荘だ

烏帽子小屋、水晶小屋でなんとか通じた携帯電話は三俣山荘では全く使えない。その代わり小屋のスターリンク電話で家族に連絡を取ったが、20秒で¥100と高額だ!双六山荘、ヒュッテ大槍、徳澤園にキャンセルの電話を掛けたら3分を越えてしまい¥1400となった。山ではなんでも金がかかりますな。
一昨年、昨年と北アルプスに来ているのだが、毎年費用がかさんでくる。

       昔からある屋根裏大部屋だが不快ではない

       残念だが展望レストランは何も見えない

7月25日(木)
三俣山荘5:20~双六山荘7:40~鏡平山荘9:40(4:20鏡平から3:30)
朝になり、昨日よりはマシだが、雨は止む気配がない。今日も三俣蓮華岳ピークをカット、巻き道を行く。天気が良ければ行くのだが、もとより山頂にはこだわりがない。道はほぼ東側水平にトラバースしており、歩きやすい。そのため風が当たらない。4時間半歩いたが、身体が冷えることなく進む。
2時間半で双六小屋到着。残念ながら中には入れないため、休むことなく小池新道へと足を向けた。道はさらに良くなったが、連日の疲れが出たのか、下山できるという気の緩みか、足の運びが悪い。一瞬日が出た。ここまで来るとすれ違う登山者が段違いに多く、すれ違うのも緩くない。遠慮して譲ると確実に遅くなる。遠慮は無用だ。

              ホテル並みの小屋

折戸岳から稜線を外れ、鏡平山荘へ一直線となる。もう客観的危険は無い。後は転倒しないように歩くだけ。気が緩むと、疲れているだけに転びかねない。
鏡平山荘も飛び込みだが空いていた、。とても山小屋とは思われない立派な小屋で、新築の匂いすら有る。
改装して開いたばかりなのだろう。何より洗面所が素晴らしい。濡れた雨具は、超強力な乾燥機のおかげで、1時間もかからないで乾いてしまった。これは驚きだ。普通は半日かかるのに。部屋は新しいが狭い。これだけは減点だな。小柄な自分でも狭く感じるのだから、大柄な人には辛いか。

      本来槍ヶ岳が見事に池に写るはずだがガスだけ

超快適なホテル並みの小屋は人で溢れていた
鏡沼に写る槍ヶ岳が売りなのだが、雨がひどく、全く見えない。一瞬見えそうになったが、だめだ。夕食は3日間連続してカレーライスだったが、ここはコロッケと春巻、ケーキなので新鮮だ。明日の天気は回復基調らしい。もっとも4時間ほどで下山だからどうでもよい。

   21日22日23日,24日とカレーばかりだったのでコロッケは新鮮

7月26日(金)
鏡平小屋6:00~新穂高温泉10:00~バス10:55~11:28平湯12:55~松本バスターミナル

朝起きるとガスがかかっていても雨は降っていない。5:40スタート。登山道は舗装されているのかと思うくらい立派だ。石畳を敷き詰め、躓きようが無いくらいなのは、北穂の下や、岳沢小屋迄のアプローチに匹敵する。ただし、入山して来る登山者が多すぎてすれ違いに難儀する。天気は急速に回復するようで、これから登る人はラッキーだ。次第に明るさを増し雲が晴れてきた

  秩父沢は流れが急できもちがよい休憩場所として休む人が多い

よく注意点として出てくる秩父沢が現れた。大雨で落橋するとのことだが、たとえなくても渡渉は困難ではないだろう。昨日の雨で川の流れは速く、しぶきが上がり涼しくて気持ちが良い。しばらく休憩する。下がるにつれて天気は回復した。今更良くなっても仕方がないが、言うまでもなく雨よりはマシだ。気分は爽快。槍ヶ岳へ行けなかったが、とりあえず裏銀座は完踏出来たし、蓮華温泉から後立山連峰と裏銀座をつなぐことができた。

            穂高連峰が見えてきた

登山人生において完成といって良いかもしれない。まだまだ行けていない山は多けれど、こんなものだろう。もう75歳を過ぎるのだから無理はできん。わさび小屋から単調な林道歩きとなり、とてもつまらなく、疲れが山道の倍はする。9時半新穂高温泉に到着。登山指導センターで割引券をもらい、直ぐに温泉に入行くと今日は風呂の日(26日)なので通常¥800が¥500そして100円割り引いて半額の¥400だ。金のかかる山行で嬉しい。
日の差し込む露天湯舟でアセをながし、ヒゲを剃る。これだから山はやめられない。バスは平温泉で乗り換えとなり、チャーシューラーメン1100円なりを食べる。塩味が美味い。松本には14:35到着。暑い、とても暑いので頭がボーっとして来る。バスターミナルからスーパーホテル迄の間に何回もエアコンの効いた施設に入った。



今回の裏銀座山行の反省点を上げるとすれば、なんといってもルート上にある山の頂上を11座のうちたったの6座しか踏んでいないことだろう。
天気が荒れて、巻き道を行きまくったのが原因だが、ピークに全くこだわらなかったのが主因である。岩稜に乏しい今回は山旅に撤したのだ。言い訳だけどね。
昨年2023年10月に明星山P6南壁フリースピリッツを目指したものの、小滝川が増水し、渡渉できずに小川山へ転戦した。次の日黒部温泉より富山電鉄とトロッコ列車に乗り欅平に入った。下の廊下を目指す者として欅平から大太鼓までの水平歩道を偵察に入った。
考えていたより困難ではなく、想像以上に楽しいことが分かった。

黒部ダムから入り、阿曽原温泉で一泊したら次の日には欅平まで抜けることが出来る。黒部ダムからほぼ水平に岩壁を削った歩道はわずかずつ下るので、時間はかかるが体力の負担は考えるより少ない。
前後の日数を含めて5日ないし6日あれば十分だ。なにせ天候に左右されないのだから計画に狂いはほとんど生じないはずであった。

そんな完璧な計画も2024年1月1日の能登地震で御破算になってしまったのだ。
3月の初めにトロッコ列車の鉄橋が落石のために破損していることが判明したのだ。たいしたことはないだろうし、すぐに復旧するとみていたが、続報を探ると次第に暗いニュースばかり飛び込んできたのだ。
調査が進むにつれ、鉄橋の破損自体より上部の岩壁に危うい岩の塊が存在し、それを撤去する方法がすぐには見つからないとされ、2024年度中にはトロッコ列車は運休となった。

これはショックなニュースであった。これが使えなければたとえ下の廊下が歩けても黒部市に抜けることが出来ない。つまり黒部ダムへ引き返すしかないのだ。
これでほぼ下の廊下計画はダメになった。追い打ち意を書けるように阿曽原温泉の2024年営業中止が発表された。それはそうだろう。

時は5月になり、昨年秋に伊藤新道の紹介講演を聞きに行ったことを思い出し、高瀬ダムから入り、伊藤新道、三俣山荘、西鎌尾根、槍ヶ岳、上高地へ抜ける計画を立てた。後立山連峰をほぼ踏破しているので、つなぐことが出来たら素晴らしいではないか!
5月中旬、飛行機の予約から、山小屋、旅館、シャトルバスとすべての予約を取って計画は完璧に出来たのだが、7月上旬、またまたとんでもない情報が入った。

湯俣川に架かる第三吊り橋が破損したと。そのうえ水量が多く渡渉は困難であると。開通は8月20日ノ予定とのことであった。
伊藤新道は開通しなければ通ることが出来ないのか?関所かゲートでもあるのか?そんなわけはないとは思っても、単独者がロープの確保無しで渡渉を15回以上繰り返すのは、事故時に暴走後期高齢者と非難ごうごうなのは火を見るより明かだ。とうとう計画は高瀬ダムからブナ尾根を這いずり回って登るルートに変更となった。北アルプス三大急登なんて一番避けたいと思っていたのに、楽は出来ん。しかし、考えようによっては此処さえ登ってしまえば、後は稜線をのんびり歩いて進めるのだから良かったとも言えるのかな?


山行費用の決算と値上がりの考察

山行費用を決算してみると、一昨年より値上がりしているものが相当あることに気が付く。丘珠空港までのバスが500円から700円へ、丘珠カレーが800円から1,000円になっていた。FDAの航空運賃は時期とタイミング、地方便だから一概に値上がりとはいえないが、往復36,000円程度が52,900円になっており痛い。
七倉旅館も2,000円くらい高い。
山小屋は高値安定で14,000円から16,000円(弁当付)なのだが、三俣山荘は水晶小屋と系列が同じなので12,000円に値引きされたのはうれしい。
ただラーメンはうまいが1,800円は高い!
同じ三俣山荘では携帯の電波が入らず、スターリンク電話を借りて1600円は痛い。
下山をして入った温泉は、登山指導センターの割引券と26日風呂の日ということで普通800円が400円と半額だ。
松本のスーパーホテルは前日の予約のせいか14,500円と非常に高く足元を見られたような気がする。松本循環バス、市立博物館ともに100円の割引があった。
トータルすると今年167,000円が、一昨年であれば145,000円程度であっただろう。
仮にテント泊にした場合、小屋代58,000円がテント場代12,000円程度になる。
食料を軽量化してフリーズドライとすると、14食X500円=7,000円。
小屋で暖かいものを食べたくなると平均1,500円は飛んでいくし、テントが潰れるくらいの風雨となった今回は二日間、皆さん小屋に逃げ込んでいた。
となるとテントとオール山小屋では20,000円程度の差だろうか?
ザックの重さテント装備15kg、小屋泊まり6kgと差が出る。どちらを選ぶ?
高齢者の私は当然楽な方を選んだのは言うまでもない。