赤岩 スカイリッジ 1990年

赤岩 スカイリッジ  

天気晴浪なれど波高し

1991年2月17日
                  
台風なみに発達した低気圧の為に昨日より大荒れの天気であった。
それでもあきらめきれない二人は赤岩目指して車を走らせた。最終人家よりスキーを用いたが,膝までのラッセルとなり非常に苦しい。
しかしTKは終始トップで黙々と峠まで一気に進んでiいく。
ここからワカンに切り替えて中赤岩を通り海岸目指す,股以上にまでもぐり、まるで山の奥でもがいているようだ。 海岸へ着いてまたびっくり,天気はかなり良いのだがまさしく怒濤の高波が押し寄せているではないか!

「ウーム こりゃまずいわい,どうするかなあ……」しきりに首を傾げる二人であった。 しばし躊躇したがしかたがない、今更もどる気もしないのでとぼとぼ歩き始めた。 青い岩塔を越えるとそこは正しく地獄の一丁目である。
スカイリッジ取付きまでは海岸線をへつって行かねばならないのだが,高波が完全に洗っている。波が引いたわずかな時間に突っ走って安全圏に抜ける必要がある。
しかしタイミングを間違えると波にさらわれて海のも屑と消えてしまう。
そうしたらきっと新聞にこう乗るに違いない。「登山者が海で溺れる!」情ない見出しが頭に浮かびつつまずTKが走った!次に私。次の波が引いたすき此又TKが走る
しかしタイミング合っていない!あっと思うまもなく激しい波がおそって来てTKの姿が見えなくなった。「ああこれでTKも-貫の終りだ、山でなく海で死んでしまうなんて因果な男よ」と一瞬考えてしまった。
が、岩にしがみついて難を逃れたTKが目に写った。そして私である、うまくかわしたつもりだが膝上まで2回も波をかぶった安全圈へ抜け話を聞くと頭の上から
鼻の穴まで海水が入ってしまったとのことである。 不幸中の幸いや、幸中の不幸かな?ゴアテックスを着ているといえど下半身はびしよ濡れに近い。
マイナス6°Cとけっとう気温も低く,しかも風が極めて強い。ゲレンデにしでは辛い登翠になりそうである。

1P目 TK一SM
 リッジの末端を直上しバングを左へ3m卜ラバース、そして直上していく難しくないが脆い。

2P目 SM―TK
 同じような脆いリッジを左上ぎみにのぼる。ここからルンゼを右上トラバース100mでふたたびリッジへと移っていく。

3P目 TK一SM
 ビレー点がないのでスタンデイングアックスビレーとなる。
 凹角を直上し左ヘトラバース、そして右上するのだが非常に脆く触るすべてが崩れてしまう。ピンはほとんど役立ちそうもない。

4P目 SM―TK                
 このルート唯一硬いピッチであり雪を崩しつつ細いリッジを進み、2m程の垂直の壁を直上し右の雪壁をトラースし潅木でピッチを切る。

5P目 TK一SM
 雪壁を直上ブッシュ帯を進む。雪を崩すと下から巻き込む風で顔面がビリビリしびれ凍傷になりそうだ・

6P目 SM―TK
 同じようなブッシュを進む。

7P目 TK一SM
 ブッシュを一度ルンゼへ下り脆い壁を直上する。        

8P目 SM―TK
 極めて簡単であるが、胸まで有る雪・を崩して登るのは大変だ。-
 ひたすら雪の海でもがき顔面凍傷寸前でルートの終了点となる。

赤岩とはいえ今回のような条件では本番と何等変わるところがない。
 むしろ軽い意識を持つと危険だ。ともすれば易きにながれる傾向のある私を、言外に叱咤激励し続けてくれたTKとも今回の山行で最後である。
                            (SM)
                

スカイリッジは三つの岩塔の真下にあり、赤岩の端の端といえる。
ボロボロの岩質ゆえに冬以外は登攀対象とはならない。
冬であっても、アプローチが遠く、ラッセルが必要となるアルパインクライミングそのものとなる。一度は訪れることを推奨したい。