クライマーの目眩日誌

2024年9月クライマーの備忘録を公開することにしました。


2024年9月19日(木)
札幌市ヒグマ出没情報によると『札幌市は、市域の約6割が森林で占められており、豊かな自然に囲まれた大都市であるが同時にこの森林には、多くのヒグマが生息している。札幌市には、市街地とヒグマの生息する森林とが直接つながっている地域が多く、ヒグマの森林から市街地への侵入を防ぐための緩衝帯となる地域が少ない。さらに近年、管理がされず、草木が生い茂ってしまっている土地や、放棄されたままになっている果樹が増えてきている』
『近年、ヒグマ出没に対応できる熟練した捕獲従事者の減少及び高齢化が進んでおり、将来的な人材不足が懸念されています。また、春グマ駆除廃止以降、保護に重心を置いた施策が実施される中で、捕獲従事者の減少と高齢化により、ヒグマへの捕獲圧が緩んだことが原因と考えられる、人への警戒心が希薄で、人を恐れないヒグマの出現も見られております。ヒグマの生息状況が変化し、市街地での出没件数も増加傾向にある中、ヒグマを市街地に侵入させない対策を進めるとともに、ヒグマ捕獲の経験と技術を有する従事者の育成が課題となっています』
と注意喚起情報がいつの頃かより出放しになっている。しかも市民に愛されている西区の三角山、大倉山などが入山禁止になり、すでに三か月が経とうとしているのは異常である。札幌市は9月12日、西区でヒグマ1頭を捕獲し駆除したと発表した。外見的特徴から、三角山の登山道で出没した親グマとみられる。西区山の手の自然歩道に出没していた親子の母グマらしい。 以前に調査に入った専門家が襲われケガを負わされた親子連れともみられ、子供の二頭がいまだに付近を徘徊していると思われる。おかげで私の散歩もできなくなった。
昔は山に入るか、南区の果樹園近くでなければヒグマに遭遇するなんてほぼありえなかった。それが1990年を境にヒグマを取り巻く状況、ヒグマに対する政策が大きく変わったことが原因だろう。以前は毎年、道の春グマ駆除制度により全道で春に冬眠から目覚めたヒグマをわなや銃で駆除し続けていた。しかし、世界的な自然保護への意識の高まりを背景にヒグマを保護していく、ヒグマとの共存を目指す政策へとシフトしたことにより当時3000頭余りとみられていたヒグマが、2024年度にはなんと12,000頭を超えるとみられている。
ヒグマには個体に応じてテリトリーがあり、子育てを終えた子熊は親から追い出される。当然、子熊は自分のテリトリーを探さねば生きていくことが出来ないわけだ。山にはすでに自分が生きていく領域は一部の隙もなくなり、市街地近くへと追い出されるのだ。その上札幌市の出没情報にもあるように、果樹園などの緩衝地帯がなくなりつつある現状では人を恐れないアーバンベアとなり、玄関先を徘徊するのだ。意外なことにクマに襲われる事故は登山ではそれほどない。多くは市街地で発生している。この問題はすでに北海道、東北、長野だけでなく、なんと東京都あきる野市においても市街地に出没が始まったという。クマだけではなく鹿、イノシシにおいても同じ傾向のようだ。人口減、地方の衰退、都市部への人口移動などで、その傾向は加速していくに違いない。将来、日本列島は原始の世界へ戻るのだろうか?

2024年9月17日(火)
連休の先日、赤岩へ行くつもりで家を出た。しかし、天気予報が外れてしまい小樽に近づくほど雨がひどくなってきた。すぐに予定を変更し、民間のクライミング施設H小屋へと進路を変えた。H小屋には雨で逃げ込んだ人が8名程度居たので少し驚くが、誰しも考えることは同じなのだ。当方の二名が準備をしていると、先客のHクラブの指導者が新人にアンカー構築、懸垂下降等の指導を熱心にしているのが見えた。
それも、地面の上ではなく天井面にあるアンカーに三人が登り、緊張感のある実践的指導のようだ。型どおりではなく、場面に応じたアンカーの作り方、マスターポイント、残置物の選別等、思わず耳を傾けてしまうほど具体的で内容が濃い。

ただ登るだけであれば、20,30代の人はすぐに5.11程度は登るに違いないが、クライミングにおける手順、ことにアルパインクライミングなどのマルチピッチでの手順と応用は、見たり聞いただけでは絶対にマスターできない。
緊急時に確保や、脱出する場合、練習を重ねておかなければ現実では実行できない。
地震時の避難、火事での避難等も全く同じである。
つまり、頭だけでは身につくことはなく、同時に体で覚えなければ自分のものにならない。
訓練の様子を見ていて、どれだけ自分が出来ているか不安を覚えてしまった。
良い指導者のいるクラブが、活発な活動をしているのは当たり前だと思った。
2024年9月14日(土)
Yahoo(信越放送)ニュースによると
「北アルプス北穂高岳で男性が左足にけがをして、長野県警のヘリで14日朝、救助された。 北アルプス北穂高岳で愛知の男性救助 山小屋に到着も「肉離れ」で下山が難しく救助要請 救助されたのは、61歳の男性です。男性は、9日単独で七倉から入山し、13日は南岳から北穂高岳に向け縦走中、左足に軽いけがをしました。 現場は北アルプス北穂高岳北峰付近だったということです。 男性は山小屋まで到着しましたが、肉離れを起こしていて下山は難しいことから午後6時ごろに救助を要請したもので、14日朝、県警のヘリで松本市内の病院に搬送されました。」とあった。

9日に七倉から入山し、13日北穂高岳に到着しているから、順調に歩いてきたことがわかる。危険極まる不動岳の崩壊リッジを通過していることから、十分な経験者が裏銀座に入ったのだろう。であれば無理をしてケガをしたとか、素人がなどとコメントに書き込みがあることに違和感を覚える。どのように歩いても、時として肉体的アクシデントは起きるものだ。町で転んで救急車を呼ぶのが非難されるだろうか?
山であっても自力で下山できなければ、ヘリを呼ばなければならない。最近よく見かける、疲労で歩けなくなり救助要請した案件とはまったく性格が違うだろう。
しかし、そのためには山岳保険、計画書、ココヘリなどの事前準備をしておかなければ非難は免れない。大キレットでケガして北穂の小屋までなんて相当頑張ったし、本人は出来れば自力下山を目指していたであろうと思いたい。
ニュースの一報からはそれ以上わからないが、無事でよかった。