大雪山 旭岳~トムラウシ 2013年

大雪山 旭岳~白雲岳~トムラウシ岳

2013年7月22日

定年になったら大雪山の縦走をぜひやって見たいと考えていただけに実現出来るのはうれしい。夕方札幌を出て高速道路を使ったアプローチは金がかかるが仕方ない。 旭岳温泉の駐車場で車中泊はノートゆえに狭くて良く眠れなかった。

2013年7月23日

   旭岳の姿見池から噴気穴を見ると地球は生きていると思う

ロープウェイ駅には既に10名近い登山者がいた。
6:10姿見池を見るのは何年振りだろうか。35年前に大型二種免許を取った後に白雲岳に一泊で登って以来だ。森林限界を越えた所からあるき始めるのと快晴無風で気分はとても良い。ルートは火山灰と砂礫なので歩きにくく、ガスが出た場合道迷いの可能性が高い。天気は回復し絶好の日和だ。ただし、歩き始めから旭岳頂上まではザックが重すぎて苦しくてたまらなかった。水も3リットルと1リットル余計だし、食料も多すぎる、シュラフもカバーはいらないし、考えたら三キログラムほど削れたはずだ。
このコースも油断が出来ない。過去には下山時ニセ金庫岩でルートを左に外れ遭難した不可解な『SOS遭難事故』があった。
ヘリコプターにより上空から発見された木組みされたSOSの元には白骨化した遺体があり、側には装備、中にはテープレコーダが有った。
『SOS、助けてく!』などと録音されていた事により、下山時遭難したのだろうと判断されたのだが。問題はそれだけでは済まなかった。
調べてみると遺体の骨は二人分あった事により、事件か、知り合いか、時期がズレた2つの遭難か。あれこれ憶測を呼んで大騒ぎになった事を今でもわすれていない。

      ニセ金庫岩? 金庫岩? どうだったかな

ニセ金庫岩を過ぎるとまもなく旭岳山頂だ。7:55
すぐに後旭岳目指し砂礫の傾斜を下るとテン場に二張のテントがある。熊ヶ岳を越えた+たら間宮岳で御鉢平の縦走路に出た。右北海岳方面に進む。ここまで来ると登山者は前後にポツポツ見えるだけ。
御鉢平の有毒温泉が荒涼とした景色を見せ、右には高山植物が群生している。
9:47 1時間弱で北海岳到着。まっすぐ行くと黒岳、右に進路を取り雪渓をトラバース、白雲岳の下部に沿い、しばらくして白雲岳分岐到着。
ここで少し休憩、白雲岳頂上は今回カットし白雲岳避難小屋をめざす。ここから見る小屋はモレーンの上に乗り、高根ヶ原とトムラウシ山を控えて恰好が良い。これが大雪山だ。やはり高い山は最高だ。

         天気晴朗無風快適パンがうまい

11:25 避難小屋到着。
早めに着いたので二階の良い場所を確保出来た。
暇なので板垣新道を緑岳へ途中まで行ってみる。
夏山シーズン真っ只中の今であっても心なしか登山者は少ないように感じる。これは3年前のトムラウシ山大量遭難の影響だろうか?ガイドツアーがほとんど見受けられない。自分もほぼ同じ日程、コースを行くだけに気を引き締めなければならない。
2年前銀泉台から登った時は、大量遭難翌年だけに小屋の中は緊張感が漂っていたのを思い出す。次の日は大荒れの天候で、体が飛ばされそうな風と叩きつける雨は容赦が無かった。進路は不明ではなくてもジリジリとしか進まない。
本来、北海岳から間宮岳を通過し黒岳へ向かう予定が、風向きに正対するため諦める。分岐を右に進むと追い風なので少し余裕が出てきた。
しかし、赤石川雪渓で進路をロストしてしまったのだ。

         近年建て替えられた白雲避難小屋

ガスがひどいとしても、こんな所で見失うとは思いもしない。地図とコンパスで地形を確認してようやく登山路に復帰したほっとした。
天候が悪いと標識を見落とし、気づくのが遅れると遭難まっしぐらだ。
こんなメジャーなコースでも油断は出来ない。
とは言え今週の天気予報は安定しており、雨が降ったとしても短時間か数時間でやむだろう。夕方になり雲が出てきたが見通しがよくトムラウシが見える。
いつの間にか小屋の中はほぼ一杯になりさすが一番人気のルートだ。
隣には東京の八王子市から一月近く北海道の山を回っているJTさんと話をした。
 私よりちょうど10才離れているということだが、大きなザックにびっしりと装備、食料を詰めて毎日歩いているとの話だ。そのバイタリティーに圧倒されてしまった。果たして10年後、自分にそのような力が残っているだろうか?全く自信がない。

          トムラウシの上空に浮かぶ満月

2013年7月24日
04:10 起床し朝食、すぐにパッキングし表に出た。
三時半頃目が覚めると快晴、月も白雲岳の東にかかっている。
すぐに支度をして避難小屋を出て歩き始めるが、10分ほど歩いたところでストックを小屋の表に忘れてきたことを思い出し、空身で取りに戻るり、往復20分のロス、わが身のアホさを痛感する
朝日が高値が原とトムラウシに当たり紅に染まる光景は、何ものにも替えがたく歩いてここまで来た者にしか与えられない。それも天気がよければの話だが。
04:25JTさんとヒサゴ沼まで日程が重なるのでご一緒することになった。
白雲避難小屋から東側に切れ落ちたアップダウンの少ない高根ヶ原をコマクサなどの花に囲まれ歩くのは無上の喜びである。花畑の路をさらに南下して忠別岳沼に到着。風のない穏かな沼は忠別岳を写し込み音のない不思議な雰囲気に溢れていた。6:55 空を見上げるといつの間にか西から東に向って筋雲が引くようになっていた。天候は悪化するだろう

            中別沼は花の園だ

忠別岳まではほとんど平らな高原を歩くので、気持ちが良いし、距離もぐんぐん稼げた。ところが、忠別岳避難小屋分岐あたりからガスが出てきて、あれほどよかった空があやしい天気模様になる。
7:55 忠別分岐通過、下方遥かに三角山屋根の忠別避難小屋が見える。
8:30 忠別岳頂上到着。この時点ですでにトムラウシは雲に隠れて見えなくなっていたので残念であった。
五色岳方面に下り始めてまもなく雨が降り始め、あたりはほとんど視界がなくなった。まもなく土砂降りの雨となり、慌てて雨具を着て、とりあえず化雲岳を目指す。化雲平手前周辺ではガスの中チングルマが、どこまでも続く、果てしのないの群生を見せてくれ、ガスに煙る花は幻想的で素晴らしい。
天国というものがどこかにあるのならば、きっとここに違いないと思われるような美しさであった。この辺りから木道が現れ,とても歩きやすいので非常に助かる。
33年前にクワウンナイ川を遡行し、源頭でテントを張り、あくる朝にトムラウシへ向うもガスのため方向を失った。そのときは雨でぐちゃぐちゃになった道を泥だらけで非情に難儀した経験を持つだけに時の変化を深く感じる。
10:10化雲岳通過。木道はさらに続き、あたりはまるで天上極楽の中にいるのではないかと思わされるほど花に囲まれ時間の経つのを忘れてしまう。
雪渓を下降し始めしばらくするとヒサゴ沼が目の前にあらわれた。10:45
いつの間にか雨は止み、沼は誰も居らず静かなものだ。

         ヒサゴ沼避難小屋も新築となった

残雪の多さとガスの中、ルートを確認しつつヒサゴ沼へ到着。ヒサゴ沼避難小屋はまだまだ健在でした重い荷物にもかかわらず考えていた時間より早かった。
早くついたもののやることがないので沼のあたりを散策するが、花以外に何もない。花に興味がない自分にはいちいち写真もろくに撮らないし、名前も調べない。昔は一応写真を撮り、名前を調べ覚えるように努力をしたのだが、興味のないものにはやはり長続きせず、全く関心を失って今日に至る。
小屋に戻ると数パーティーが到着しており少しにぎやかになった。

2013年7月25日

3:00起床、3:40目が覚めても雨は小雨のまま降り続いていたが天人峡から旭岳温泉駐車場まで車を取りにタクシーで向うのだが同じ計画の中年女性と共に、、出発する。
ほとんど視界はきかず、途中ザックをデポし、岩につけられたペンキを頼りに日本庭園薄暗い中小屋を出て一応トムラウシへ向うが霧雨が激しくなり縦走路に出た時点で山頂は諦め天人峡温泉へ下山することにした。
4:50 化雲岳通過。

  ガスに浮かぶ木道 ガスの見渡す限り、何処までも花園は続く

このあたりより天候は急激に回復し雨具をしまう。
25年ほど昔にきたときにはなかった木道が1kmあまりも作られていたので、非常に歩きやすい。昔は、このあたりはぬかるみがひどくて非常に苦労した思い出がある。木道はさらに続き、ひょっとすると温泉の登山口まで続くのかと思ったが、そんなことはあるわけが無く傾斜が出てきた時点で消えた。
深くえぐれた道で同行した女性が頭から転倒しびっくりした。
幸い傷はたいしたことが無く、絆創膏を貼っただけですんだ。
よく見て歩いてよと言いたかったが何も言わない。きっと長時間縦走して疲れがピークに達していたのと、もうすぐ下山できるとの木の緩みのためだろう。 
笑っていられない、自分も同じことがあるかもしれない。
8:45 天人峡温泉到着。

           羽衣の滝は優雅で美しい

いやになるくらい長い下りも、天人峡が見えてくると転がり落ちるように登山口到着。これでようやく課題だった旭岳~ヒサゴ沼~トムラウシ山~天人峡の縦走が終わった。とても楽しい山登りが出来た。単独ゆえの気ままな山は危険と裏腹だが充実感が半端ではない。