『岩と雪BEST SELECTION 1958~1995』山と渓谷
『岩と雪』(1958~1995)に掲載された当時の先鋭的クライマー、論客である本多勝一、吉田二郎、上田哲農、遠藤甲太、柏瀬祐之、岩崎元郎、斎藤一男、古川純一、高田直樹たちの論文と記録の数々がぎっしりと詰まった感がする。鉄の時代からフリークライミングへと移っていくときの記録が、当時の記事としてそのまま載せているところに価値があるのではないか。クライミング自体に熱い意見と論争があった、ある意味幸せな時代をあらわしている。その他にも平山ユージ、山野井泰史そして孤高の人吉田和正と盛りだくさんだ。しかし、掲載された歴史的記録等には当然ながら人により、異論もあるような気がする。
まだまだ載せたい記録があるのは否定できないし、長い日本登攀史を一冊にまとめることに無理があったのだろう。歴史は出来事の積み重ねであり、連続していくことをまとめて出来上がるのだが、クライミングにおいては既に歴史は途切れてしまったのではないだろうか?
後世に似たようなBEST SELECTIONは出ることはないと断言できる。
とはいえ、読む価値に疑いはない。