山用カメラ遍歴

クライマーの山カメラ

ニコン F2フォトミックA  


1983年10月のある日、かねてより羊蹄山のご来光のすばらしさを聞かされていた私は、真狩登山口より、生まれて初めての本格的登山を実行することにした。とにかく山登りのノウハウは事前に読んだ山と渓谷だけなので不安は大きかった。地元にはアウトドアショップなど存在しておらず、用意できた装備はスニーカーとビニールの雨合羽、サブザックと帽子だけというお粗末さだった。当時写真を本格的に趣味としていたので、カメラはニコンF2Aと超重量級を持っていてしまった。
単独でもあり、登山口が何処かわからず迷走し、やっと比羅夫登山口にたどり着いたのは21:00を過ぎ、寝る間もなく3:00登山を開始した。ヘッドランプの存在を知らない私は単二の懐中電灯を手に持ち、真っ暗な登山道をひたすら登って行った。登るペースがあることを当然知っているわけもなく、すぐにばて気味になり休憩を繰り返した。何度もこれほど苦しいなら止めて降りようと考えたが、登るにつれてせっかくここまで来たのに、惜しいと考えなおして続行した。まともな装備は皆無だが、根が慎重な私は水を3L、雨合羽、食料、セーター、そしてニコンF2Aは1.2kgである。

結構重いのだ。喘ぎつつ8合目で見たものは白いエビのしっぽがびっしりと付着したハイマツであった。F2aを持ってきた甲斐があったと喜んで写真を撮りまくった。その後避難小屋で休憩し、ガスで覆われた頂上へ向かった。外輪で一瞬ガスが晴れ、ブロッケンを見た瞬間疲れが吹き飛んだ。この時に私の山人生が始まり今日に至ったのかもしれない。問題は下山になる。足元は今朝降った雪が解け始めてドロドロとなり、何回も転倒する始末だ。下山するにつれて雨が降り出し、足がもつれ引きずるように登山口へたどり着いた。34才とはいえ、全くの無謀登山である。強く反省した私は、次の休みに札幌市の登山用品店へ出かけ、まともな装備を手に入れたのだった。山にはあまりにも重すぎてたった一度しか持ち出さなかった



ニコン FE  1982年
 

     激しい使い方でシャッターが二回も壊れた

1982頃に、知り合いから新品同様のFEを、15,000円という当時としてはただ同然の値段で譲り受けた。
ほとんど新品状態だったので、サブカメラとして20年間フルに使用した。
1983年から山登りに目覚めた私は、F2Aを携帯して、あまりの重さでひどい目に遭ってから、FEのみ山で使うようになった。
AEも有るし、たとえバッテリーが切れても使える安心感が有るのでハイキングに、アルパインクライミングにと常に携帯した

写真を見てもらうとわかるように外観はベコベコになった。
これは、アルパインクライミングにのめり込んだ私が、必ずと言っていいほどクライミング時に持参し、いやと言うほど岩にぶっつけたからなので、これほどひどい使い方は普通ありえないだろう。本チャンの緊張時には、カメラをかばう余裕などない。
生死を共にしたFEだがデジカメが出てきてから使うことがなくなり、シャッター故障のあげく資源ごみとなった。        

      


HASSELBLAD 500CM planar80mmF2.8  2000年

 スエーデンといえば、ボルボとハッセルブラッドだったのだが


2000年の9月、たまたま立ち寄ったカメラ店に500CMがあった。
昔あこがれていたカメラだが、天文学的金額で、とてもとても買えるものではなかっが、このカメラの価格はリーズナブルで、私にも買えそう。
程度も良く、オーバーホール済みなので、思い切って買うことにした。
ウエストレベルファインダーは左右が逆に写り、構図を決定するのはとても難しく、慣れるまで大変。
そのほかにも、フイルムの装填方法や、レンズの装着は独特の決めごとが多く、簡単ではない。しかし、スウェーデン鋼ボディの優雅なデザイン、カールツァイス80mmf2.8レンズは、時代を感じさせない美しさと際立った写りを見せてくれた。山には赤岩と手稲山に持って行ったが、やはり重くて持て余してしまった。登山写真家の方々のご苦労と体力に驚くばかりだ。以来20年間高価な置物として書棚のなかに鎮座していたが、終活の一環としてこれもオークションに出品すると意外なことが起こった。
このカメラ特有の故障、すなわちフィルムの巻き上げが出来なくなると同時に、シャッターが切れなくなり、レンズも外れなく、ニッチもサッチモいかなくなると言う持病だ。   修理には最低3万円から5万円必要とするので、直す気にならずジャンク品として出展することにした。指値を3万円として様子を見ていると最終日に3万円を超えていく様子を見て眼が離せなくなった。次第に応札が5万6万と入り9万円を越えたころ少し気味が悪くなった。これはジャンクと銘打っているのを再確認して少し安心するが落ち着かない。   
500CM80mmf2.8は、お店では程度が良い中古でも12万円程度で買えるのだが、程度が抜群に良いとは言え、このカメラはシャッターが壊れているのだから入札する人の心理が分からない。あれよあれよと上昇し、とうとう11万円で落札されてしまったではないか。いやオークションの醍醐味と言おうか、終わってみなければ分からないとはこのことだ。貴重なスウエーデン製の光学器械遺産とも呼べるカメラが、ともあれ本当に大切にしてくれそうな人に渡ったことに一安心したのであった。おかげでアイスアックス一式を買うことが出来た。

  


キャノン EOSKISS X3 EF-S18-55 2010年

  APS-Cだが軽量で故障もなく10年以上フルに使った


仕事が忙しくなり、山は10年ほどお休みしていた。その間カメラはフイルムからデジタルカメラへと革命的変化してしまった。キヤノンEOS Kiss X3 EF-S 18-55mm F3.5-5.6 IS付きのレンズキットを買った。
撮像素子のCMOSセンサーは有効1,510万画素に増加。映像エンジンもDIGIC 4になっていた。高感度性能も驚き。ISO1600は充分常用できるので、室内撮影で活躍した。
X3はミラーレスと比べると古典的カメラではあるが、純粋にカメラとして見た場合、やはり一眼レフのX3のほうが個人的には優秀であると思る。
もっとも、今日、デジカメ一眼レフをミラーレス一眼が圧倒している状況を見ると、軽さは正義の格言を思い出さざるを得ない。富良野岳~上ホロカメットク山に早速持参した。首からぶら下げて歩き、途中の花や景色を撮影したが、思っていたよりはるかに軽いし、扱いは楽だった。カラパタールでは55-250mmズームレンズを買い足し持参。これはアップすると多少甘いがおおいに役に立った。同行の人にフルサイズのニコンD800を持った人がいたが恐らく素晴らしい写真が取れたことであろう。重そうだったが。このX3も売り飛ばしたため一眼レフカメラはすべてなくなった。

 


オリンパスμ TOUGH-6020 2011年

 

      沢でも、岩でも雨でも平気なタフさ


登山中に雨に降られた場合に使用するため、かねてより防水デジカメを考慮中だった。
ソニーサイバーショットDSC-TX10は価格が高すぎてパス、フジのFINEPIX XP30は丸い機体が滑りそうでパス、パナソニックも高いのでパスと結局モデルチェンジして安くなった旧製品のオリンパスμ TOUGH-6020に決定したが、このカメラ、ネットでの評判は起動が遅い、ピントが合わない、ISO400以上はノイズがひどい、手振れ補正が鈍いと結構芳しくない。しかし、一眼レフカメラでもないし、1/2.3インチのセンサーでは写りに期待は持てないのは自明なので割り切って購入。
実際に使用してみると各ボタン押下後の動作はかなり鈍く少々イラつく感じはした。
それ以外の写りに関しては、こんなものかと納得したが、期待するのは雨中の防水性だ。
わざわざ水中に入れる実験はまだやってはいないが、大雪山登山中、暴風雨の為二日目の写真はとうとう一枚も写せなかったという状況はこれでなくなる。
それ以上にクライミングにおいてその軽さは無敵のカメラとなった。首からぶら下げてもその重さは全く気にならないし、衝撃耐久性においてはどんなにぶっつけても、ボロボロになっても全く故障する気配すら見せないのだ。ただ、F3.5とレンズが明るくない上に高感度性能が低いため、条件が悪いと写りは正視に耐えられないほど悪化する。それ以外の点はクライミング用カメラとしては完璧と言えよう。2024年現在も現役である。

  

 

キャノン PowerShot G1X 2013年

  左は現役で使用中のLUMIX GM-1  右がキャノンG1-X重い

ケースがごつくて重い、合わせて740gと一眼レフ並み
2013年秋、エベレスト街道カラパタールトレッキングに行くことが決まり、カメラはEOS X3と標準ズーム、望遠ズームとしたが、バックアップとしてもう一台一眼レフは重量的に厳しい。
いろいろ考えた末、1/1.7やマイクロフォーサーズよりもーAPS-Cに極めて近い大型のイメージセンサー1.5のPowerShotG1Xが頭に浮かんできた。
Gシリーズは一眼レフの代替機としての役割を視野に入れた「サブカメラ」となっている。たとえば旅行に行くときに、一眼レフと一緒に持っていき、食事などのちょっとした外出時に使うカメラがSシリーズとすると、そもそも旅行に1台だけしか持っていけない時のカメラがGシリーズ、というイメージである。
そのため、同じ「サブカメラ」といえども、Sシリーズは小型軽量であることも重視しているのに対し、Gシリーズは基本的にどのようなシーンでも対応できることが期待されるため、結果的に重装備カメラとなっている。実像式光学ファインダーやバリアングル液晶の搭載、アクセサリーシューの装備や直感的に操作できるダイヤル類のインターフェースなど、まさにフラグシップ・コンパクトカメラがGシリーズなのである。
画素数も1430万画素と充分、レンズは、35mm換算28mm-112mmF2.8-5.8と四倍ズーム、実像式ビューファインダー内蔵、バリアングルモニター、ダイヤルとボタンを多用した直接的なインターフェースはコンパクトカメラとは思われないほど高級感がある。
ボディ本体は落ち着いた半つや消しブラック。基本的なデザインはまぎれもなくG12を踏襲している。PowerShotG12と比べると金額差が大きいので当然ではあるが、カメラとしてのクラスが違うことを感じる。重さはG12の401gに対し、G1Xは534gと133g重いだけだが、手に持つとG12とは異なり、ずっしりとした手ごたえを感じる。

おまけにハードケースも一緒に購入した為、重量が740gになってしまい、EOS X3と標準ズームに匹敵する重さになってしまった。
うーん、トレッキングに用の予備としては本末転倒かな。
しかし、PowerShotG1Xは、持って構えた時に精密機械としてのカメラを実感させてくれる。G12よりもかなり大きくなったような印象を受けるが、実際に両機種を並べてみると、それほど差がないことがわかる。両機種の違いは、むしろ持った時の「ずっしり感」かもしれない。
実際にトレッキングでどうだったと問われたら、実は、これがX3ばかり使用し約2400枚撮ったのだが、G1Xはただの一枚も撮影せず帰国となってしまった。
あんなに気に入ったのに何故? 振り返ってみると、気象条件が厳しい山では一眼レフファインダーの便利さに尽きたと思う。
とはいえG1Xは2014年夏の北アルプス槍ヶ岳~北穂高岳~奥穂高岳~前穂高岳の縦走、剣岳~立山連峰の縦走に持参し、素晴らしい写真が取れたので非常に満足できた。
ただし、現在の標準で言えば600g近い重量は重過ぎるだろう。フルサイズのα7Ⅱでもレンズ込みで900g以下なのだから。とは言え、いささかもG1Xの魅力は薄れていない。その後オークションで売却し2015年に、はるかに軽量なLUMIX GM-1に取って代わった。

 

LUMIX GM-1 2015年


PowerShotG1Xは1インチのセンサーであるが重量が534gとコンパクトサイズにしてはがっちりしていて重たい。写りに関して不満はまったくないがクライミングに持っていくにはやはり重たすぎる。
 かといってオリンパス6020ではセンサーが1/2.3とあまりに小さすぎ、条件の悪い状況では画質が全く使い物にならない。そこで調べてみたところマイクロフォーサースの中でパナソニックルミックスGM-1Sがレンズ込みで302g群を抜いて軽いことが判明した。
しかもボディーの大きさが96mm、55mm、60mmとほとんどオリンパス6020と変わりがない。
画素も1600万画素と必要にして充分な性能を持つ。
ボディーの色も深いブルーととても格好が良いし、価格もAクラスで37,800円とリーズナブル。キャノンG1Xと比較すると色相が若干好みと違うが不満は全くない。
軽量ということは作りが少し華奢であるのは止む終えまい。
アイスクライミングに出かけたとき持参して行ったのだが気がついたときにはレンズの外観ルーレットを切ってある部分が外れているではないか!
いや、こんなものなの?ぺなぺななアルミシートがプレスで圧縮されているだけ。帰宅してから瞬間接着剤で修理したが、その後5年間なんでもないので良かった。
カバーに落石が当たり凹みが出来てしまったが動作に異常はない。
商売で写真を撮るわけではなく、作品を撮る訳でもないし、記録としてのこすのだから途中で壊れてもいいから軽量が最優先な今日この頃。
現在2024年でも現役バリバリで活躍している。とはいえ9年目に入ったので動きに少し不安を覚えているのだが、買い替えたくてもデジカメの需要が減り、中古でも価格が下がってこないのだ。基本的に車とカメラは中古派の私は新品を買わない。この傾向は変わることがないので困ったことだ。

  マイクロフォーサーズでは一番軽くクライミングにフル活用だ

 


ソニー a7Ⅱ ゾナー35mm f2.8 2020年


フルサイズは安くはない、安くても15~20万円を越える事になるし、当然ながらレンズはさらに高価であり、トータルすると新品は30万円を越すのではないか。
どうせ体力の落ちた高齢者が山に持っていけるわけもなく、町場でよい写真を取れるわけでもない。突き詰めると宝の持ち腐れ、すなわち猫に小判だろう。しかし私には迷ってばかりいる時間はあまり残されてはいない。
ソニーのa7は発売されてからすでに7年たち、評判は悪くないが使いにくい点も多々ある。手振れ防止がない、シャッターが軍艦部にあり押しにくい等は発売当初から指摘されていた。それが改良されたのがa7Ⅱである。
    
画素が2470万画素とたいしたことはないがフルサイズである。充分といえる。それにソニーの方針であろうがいまだに現行商品であることは中古を買うものにとって気持が良いのは自明だろう。中古とはいえ83,000円ハフルサイズでは破格だろう。
見た目は新品といって良いほど傷も、スレさえどこにも見当たらないのだから。
レンズのゾナー35mmf2.8はコントラストが高めに写り、何気なく撮っても締まりのある写真になりやすい。ディストーションは気ならない。中央部から周辺部まで、解像度の差が小さい印象。コンパクトさ、軽さが本機の最大のウリである。レンズフードはフジツボ型AFは非常に高速で、静音、流石純正伊達にカールツアイスを名乗っていない。
ズームレンズに慣れきった身には画角が取れない短焦点レンズの不便さの方が画質のよさよりも上回り1年たたずにオークシヨンで買値の46,000円で売却。
ときに指摘されもする、正面軍艦部の大きく白いSONYのロゴ。やはり、いかがかと。たとえば、灰白色であれば、ほんとに上品な感じになるだろう。昔からのカメラフアンにとってSONYのロゴはやはり違和感を感じるのは否めない事実である。
マウント部のあかがね色のリングは、ぎらつく感じ。艶消しにしてほしい。しかし、中心的な購買層を考えると、商品としては現行のままがいいのかも。画質は多くの方が、称賛していたもので発売以来5年余りになるが、十分現役でいけると思う。
操作性は決して悪くないが、手になじむという段階ではまだないと思う。スクエアな筐体は小型でも有るがもう少し色気を出したほうがフアンは喜ぶに違いない。

「カールツァイス」ブランドの標準ズームレンズ。発売は2014年1月で、フルサイズミラーレス「α7シリーズ」のファーストモデルである「α7」と「α7R」が発売されたすぐ後に登場したレンズだ。
解像力とコントラストにすぐれるカールツァイスレンズらしく写りにはこだわっており、非球面レンズ5枚、EDガラス1枚を用いるなどして高い描写力を実現。手ブレ補正機能を搭載しているのもポイントで、手ブレ補正を内蔵しないα7シリーズの第1世代モデルでも手ブレを抑えて撮影することができる。さらに、絞り開放F4通しで設計されていることもあり、73(最大径)×94.5(長さ)mmで重量約426gという小型・軽量化を実現しているのも特徴。重量はFE 24-70mm F2.8 GM(約21万円)と比べて約半分だ。
 価格は価格.com最安価格(2016年7月28日時点)で約10万5000円となっている。自分はキタムラで6万9000円ABを手に入れたが現物に不満はない。
Vario-Tessar T* FE 24-70mm F4 ZA OSSは、カールツァイスレンズとしてもう少しがんばってほしいところもあるが、期待を上回る写りであった。コンパクトながらコントラストにすぐれ、抜けがいい。望遠端と周辺部の画質は「もう一歩」と感じたものの、写真としての仕上がりはよく、実売価格約9万円という価格は十分に納得できるはずだ。手ブレ補正に対応しているのもポイントで小型・軽量で持ち運びやすく、外観の作りもよく、比較的気軽に使える高級レンズとして価値のある製品だ。FE 24-70mm F2.8 GMは、やはり最高質を求める場合に選択したいレンズだと思う。いずれにしても山には持っていく体力はもうどこにもない。

   Vario-Tessar T* FE 24-70mm F4 ZA OSS  2021

 

オリンパス TG-5RED  2021年

  首から下げてクライミングすると、重さが思いのほかに厳しい

防水を謳う全天候タフコンデジ、かつ、1台だけの購入となれば、これ、一択だろう。 山中で使うために買うのだから色は断然鮮やかな赤が良い。 理由は単純で落としたとき見失うことなく発見できる確率が断然高いからだ。山をやる人ならあたりまえだが街中でこの派手さは少し恥ずかしいか。
写真を本格的にやられる方は、いずれかのメーカーの信者で、既に一眼、ミラーレスを持っておられるし、普段使いのサブ(ハイエンドコンデジ)もお持ちだろう。強力なPCも。 写真をやられるという事で、スマホ(アプリ)との連携もじゅうぶん、ご存知かと思う。

写真の世界は、私ごときが語れるほど狭くないので…。私は防水カメラを他に所有しているが、これほど欠点の少ないカメラを知らない。レンズは最高(Wide端でF2.0)に明るいし、操作性も良し、くもり止めのガスを封入された、レンズカバー。電池容量もタフコンデジの中では有る方。手持ちのホールド感もある。さらにGPSの省電力機能、カメラらしい外観、起動の速さ、4K動画も撮れるらしい…等々。もう、TGシリーズに敵ナシと思われる。 しかし、今まで使用してきたtoguhμ-6020と比較すると決定的な欠点が一点だけある。
それは重量だ。toguhμ-6020の実装重量189gに対してTG-5は284gと5割も重いのだ。この差は大きい。クライミングしているとき首からぶら下げて使用するのだが重さの限界は200gていどにある。マイクロフォーサーズのGM-1ですら200g+レンズ100gなのだから284gがいかに重いかがわかる。首から下げると恐らく肩こりが起き、ムーブに対してカメラは大きく振れてしまうに違いない。世の中に完璧というものはないのはこの歳になると分かるのだが、有る意味完璧なこのカメラの唯一の欠点であろう。無論、私にとってだけであり他の人にとってはまた別である。悩みに悩んだ挙句売却し、流行のアクションカメラDJI OSMO ACTIONを買ってしまった。 


DJI Osmo Action 2023年

ハイビジョンでも充分美しいし、静止画を切り出しても充分使える

ついにアクションカメラを買うことにした。
ユーチューブで登山とクライミングで見ることが出来る画像は近年目を見張るような美しく、鮮明、かつ安定していることに驚いていた。
2022年6月に扇沢から五竜岳まで縦走したのだが、ルミックスGM-1で写した写真が思ったより良くないことにがっかりした。
特に八峰キレットのような急峻な岩場の臨場感は写真では困難だと思った。サンダーボルトさん、とよさんのユーチューブを見ているうちにこれだと考えた。
ただ、カメラの操作、装備のセット、そして編集の難しさに躊躇したのも正直あった。
とよさんの白馬岳から唐松岳までの画像のすばらしさに目を見張った。
もちろん、初めからこのような絵をとれるはずもないが、意外と簡単に写せるのだときずき、アクションカメラを買うことにした。
調べてみると、ゴープロだけではなくDJIオズモアクション3、360°カメラなどがあるのだが、どれも安くて5万円から7万円ほどするので失敗はしたくない。慎重に冬から研究し始めた。
ゴープロは画像の鮮明さ、手振れ補正の正確さ、水平安定性、超広角などに優位性があるが半面、熱暴走が起きやすい、バッテリーの撮影時間がやや短い、価格が7万円以上と高額である。との弱点があることを知った。

対して最近のライバルであるオズモアクションを調べると、ゴープロより性能差では少し劣るものの、決定的な差ではなく充分使えること、熱暴走がほとんどしないし、何より価格が4から6万円と安い。
ただ、最新のオズモアクション3新品47300円、アドベンチャー66300を買うのはやはりためらう。ヤフーオークションで調べると初代オズモアクションが20,000前後ででているのでさっそく落札し、オプションでケース、自撮り棒、ミニ三脚、バッテリー、ザック用取り付け金具等を購入。本体を含む金額は24500円で収まった。
手に入れてから早速使ってみたが、思ったより簡単にきれいに取れる事に驚いた。
一番難しいのは水平を保つことで、これはスマホを見て、時々修正しなければ見ずらい画面になってしまう。それ以外はとくに弱点が見られない。
難しいのは長時間写すと退屈な時間が増えるだけで、見ていて面白くない。
もっと効率的に核心部前後を写し、編集を丁寧にやらなければならない。
有名ユーチューバーさんたちは、その点編集に膨大な時間をかけて制作しているのだろう。自分はそんな面倒なことをやりたくないので。効率的に無駄な画像と取らないことだ。

もっとも、他人に見せなければ良いのだから写した画像は取っておけばよい。ただし容量は一時間で10ギガ単位になってしまう。
最大解像度4K 60FPSで撮影すると美しいに違いないがデータが重く、処理もたいへんだ。現在1080 60FPSでも十分だ。
HDDがテラ単位にしなければ大変だ。それに出力するのに今のパソコンの性能では時間が思いのほかかることに気がついた。
金沢に家族旅行に持参したが、デジタルカメラを持たず、スマホとアクションカメラだけにしたのは正解だった。
それも回しっぱなしにせず、要所要所で回す方法は無駄にデータが蓄積せずに済んだ。
デジカメだけではその前後の出来事や些細な映像、看板、施設の構造などが流れるように記録するため、何が有ったか容易に思い出される。
当分、オズモアクション3新品は必要がないと思う。
SNSサイトやユーチューブに出すわけではないので中古オズモアクションで取り合えず充分だ。

ザックにクリップで挟むが充分に固定される 傾き修正は厳しい


2023/6/12キャノンIOS KISS X3を売却し、ニコンF2Aから始まり、50年間にわたりカメラを使い続けた一眼レフカメラが,オークションで売却し、すべてなくなってしまった。さみしい思いもしたが、74才という年齢では重たい一眼レフカメラは言葉どうり荷が重くなってきたのだ。
 スマホのカメラが性能を上げ、拡大しない限り写りに不満がなくなってきた。
処理プロセッサーのHDRは少しおせっかいな気がするものの面倒がなく楽ではある。
北アルプス縦走を始めてから9回目で、初めてカメラを持参しなかった。持っていくかどうかずいぶん悩んだが、スマホそしてオズマアクションで充分と割り切った。
アクションカメラの動画はHD1080 だし、60FPSということは一分間にHD画像が60枚撮れているという理屈になる。
実際に画像を止めて切り出してみると、これがバカにできない写りなのだ。
PCで見る分には充分だし、回しっぱなしで写すと歩いている時に気が付かなかったことが判明することが多い。
北アルプス裏銀座縦走では高瀬ダムから水晶小屋まで、モバイルバッテリーに直結し、烏帽子小屋~水晶小屋まで12時間半完全収録を行なった。
まあ、無駄の方が多いのだが、漏れはない。ただし水平を保つジンバル機能が弱いので少し斜めに映っていたのは仕方がないか。 MiniSDは256GBと128GBの二枚を持参したが、総行動時間27時間すべてはカバー出来なかった。痛恨の計算ミスだった。
しかし、モバイルバッテリーはANKER10,000mahだったのでバッテリー切れの不安は全くなかった。MiniSDカードをケチらねば良かった。

黒部川水平歩道で撮影した動画を間違って消してしまった!どこを探しても見当たらず諦めていたのだが、USBメモリー復旧ソフトがあることに気が付きダウンロードした。大きく期待したわけではないが、復旧すると有難いと願いながら作業にとりかかった。スタートしたがいつまでたっても終らない。結局6時間程で終了し中身を見ると動画ファイルがあるではないか!これは嬉しかった。一通り中身を見たが元通りだ。諦めてはダメだと改めて認識した出来事だ。


Nikon SP

  日本光学精密技術の最初の最高峰は67年間を感じさせず美しい

『一眼レフカメラが,オークションで売却し、すべてなくなってしまった。さみしい思いもしたが、74才という年齢では重たい一眼レフカメラは言葉どうり荷が重くなってきたのだ。』
と以前書いたが、あれは嘘だった。嘘というより気持ちが変わったと言うべきか。写真を撮るギアはミラーレスのGM-1かスマホになっているのは確かだが、心の支えにはどうもならないのだ。
オークションを見ているうちに、若いころ憧れていても手の届かないレンジファインダーNIKON SPを発見してしまった。
とうぜん、フイルムが超高額になっている現在、実用機ではない。
眺めて、ただいじくるオモチャに過ぎないのだが落札してしまった。
届いて驚いたのは、山にはとても持っていけないが、想像以上にキレイな状態であり、シャッターも低速から高速まで安定して切れること。問題の超精密ファインダーに曇りがほとんど見られない事だった。
1957年発売なのですでに67年を経過しているにもかかわらず、当時世界最高峰のライカM3に追いつき、追い越しかけたNIKON技術者の魂とオーラが感じられる。
何よりもデジカメのようなブラックボックスではなく、カメラのすべてが自分に理解できる、他に代えがたい安心感を与えてくれる。

レンズマウントはニコンSマウント。
もちろん、「マグナム・フォト」のカメラマンが息を呑んだという高性能なニッコールレンズが使用可能。ニコンSマウントのニッコールは、他社製カメラとの互換性がないこともあり、レンジファインダー用レンズとしては中古が廉価。
SPはボディこそ中古がそれなりの値段だが、レンズについては心配いらない。
Nikon SP(ニコンSP)を語る上でもっとも大きな特徴。
それはやはり、28mm〜135mmまでのファインダー枠をすべてカバーする、ユニバーサルファインダーだといえる。レンジファインダーカメラでは、一眼レフカメラと違って、レンズを交換してもファインダーから見える範囲が変わることはない。
そのため、ファインダー内の枠(ブライトフレーム)を切り替えたり、対応する焦点距離の枠がカメラにない場合には、ライカM3などのように外付けファインダーを装着する必要があった。
ニコンSPがとった解決策は、いたって明瞭なもだった。それが、必要な焦点距離のファインダー枠をすべて内蔵してしまう、というもの。当時、レンジファインダーカメラで一般的に使用されていたレンズ広角は28mmから、望遠は135mmまですべてカバーするものだ。ただし、一つの枠にすべてを収めるとブライトフレームの大きさに問題が発生する。つまり、望遠レンズではあまりに枠が小さすぎて良くわからなくなること、そして測距をつかさどる有効基線長も、短くなるためピントの精度が悪くなる。そのため28mmと35mmのファインダーと、50mm以上のファインダーが搭載された。

ニコンSPにはほかの日本光学製レンジファインダーとは異なるボディデザインが与えられた。他のどんなレンジファインダーカメラとも似ていないファインダーと採光窓をすべて覆うような大きな窓。ニコンSPを特徴づけるデザイン。それまでの国産カメラは多かれ少なかれ、ライカ、コンタックスなどのドイツ製のカメラを模倣した機構、デザインだった。ニッコールレンズの優秀さと相まって、ニコンSPは内外のジャーナリストに愛用され、ベトナム戦争をはじめとした現場で活躍した。
しかし、時代はすでに一眼レフへと移行しつつあった。いくらブライトフレームがすぐれていても一眼レフのファインダーには劣ることは素人の私でもわかる。約22,000台作られたが最後のレンジファインダーとなり、ニコンFへと代替わりした。ただ、ニコンFもSPを基本ベースとしてプリズムファインダーを載せ、ミラーを組み込んだ構造であった。
ニコン Fは1959年から1973年まで作られ、約80万台という大ベストセラーとなった。山に行けなくなったら、カメラをいじくって頭の中でバーチャルクライミングでもするか。

  Sマウントのニッコール50mm F1.4 時代を越えても存在感がある