クライミングのノウハウ本は昔から数多出されているが、いずれもクライミングの概要を一通り解説したにすぎないものがほとんどであった。
しかも図版が写真を多用しており、例えば結びの順序などは具体的にどうなるかがわかりにくい。これは写真の限界であったと思う。
『イラストクライミング』が出版されたとき、求めていたものはこれなんだよ!と叫びたくなった事を憶えている。
イラストの場合、写真のように曖昧ではなく、ひとつひとつに解説を加えながら順番に進めていくため、自分の知識や技術の間違いを認識できるし、知らない技術を得ることが可能だ。ただし、初心者がいきなりこの本を読んでも、混乱するばかりで得るものは少ないだろう。
ある程度以上の基本的な知識がある経験者が自分以外の人のやり方などを学ぶ、自分の技術を再確認するために利用すると最高だろう。
使い方として、あまりに分量が多く、ページ数も多いため、最初から最後まで読み通すのは厳しい。詰め込んだ感があるので、二冊にして余裕を持たせたらよかったが、これはさすがに無理か。使い方として、シングルロープ、ダブルロープといった項目やノウハウ別に読んでいくのが最適ではないかと思う。クライマーが著者でイラストレーターだからこそ、細部にまで気を配った緻密な構成が実現できたのだろう。
私の座右の書である。