登攀装備のあれこれ

眩暈クライマーの備忘録 
1 ガーミンeTrex20jとジオグラフイカ
 完全防水、防塵だが画面が小さいので、スマホのアプリに押されている
今でこそスマートフオンにGPS機能が入り、様々なアプリの存在が役に立つ時代になったがハンディGPSが世に出たときは驚いた。
地図を内蔵していないため、使い方が難しく、軌跡の後戻りしか出来なかったが、それでもガスでルートを見失ったり、雪上では頼もしい。
今は地図を内蔵できるカラー画面の新型に代えたが進化はたいしたものだ。
スマートフオンのGPSアプリで充分と言う声も聞くが、eTrex20j GPSは完全防水で有り、動作時間も単三二本で連続25時間と長いのでスマホにすべてを替えることは出来ない。

もっとも、機械であるがゆえに完全に正確であるかと問われれば、否となる。
森や林で見通せない、沢など上空が狭くなっている場合衛星をロストしてしまう。
首をひねるような軌跡がしばしばログで残るが、それは無視。
やはり、基本は地図と地形を見て進むのは時代を超えて正しい。
しかしガスでルートを見失ったり、雪上では役に立つのは間違いない。

    雨の中でのスマホは次第に動作が怪しくなるので注意が必要だ

スマートホンアプリのジオグラフイカと比較すると大きく劣る点が画面の見づらさだろう。eTrex20jの薄暗い小さな画面では、軌跡はわかっても大まかに自分はどこにいるのさえほとんど分からない。アプリはその点大画面であり、高機能的なので行動中は頻繫に使うようになった。紙地図にしろ、スマホ、ハンディGPSにしても単独では不安が残る。複数持ちであっても重量はさほど変わらないので、私は縦走では全部持ちだ。そのため、行動中はザックから出すことなく、家に帰ってからのルート軌跡ログ(すなわちタイムライン)を確認することに専念させている。
2 コールマン ピークワンストーブ
 
      パーツを交換するといつまでも使えそうな堅牢な造り
ホエーブスがガソリンコンロで有名なのに対して、コールマンはマイナーな存在だったが、ホエーブスは消えてゆき、コールマンはいまだに品番こそ変わっているが売られていることに驚く。
時代は変わり、すっかりガスストーブにとって変わられたと思い込んでいたが、山以外で活躍しているらしい。
雨や、気温の低下、風にも強い、火力が大きい特徴を持つが弱点も多い。
ガソリンコンロの場合、ポンピングを行い、圧を加え、ガソリンが、バーナーのヘッダーで温められ気化されるまでヘッダーをメタで予熱しなければならない。
一度温まるとあとは、火力が落ちてきそうになるので再びポンピングをする。
長期の登山の場合は、重宝できるが、日頃の手入れが必要になり、危険を伴う恐れもある。
予熱が不十分だと燃料が十分に気化していないため、液体の燃料が噴射して炎が上がり危険である。テント内での使用も一酸化炭素中毒、炎上の危険性があるため非常に危険である。実際にテントの中でストーブが火達磨になり、外に放り投げた経験があり、最早山では使うことがなくなった。
しかし、道具としては良く出来ているので、見ていて飽きることがない。
        スノーピーク ギガパワーはソロにはベスト

3 ジャンピング ボルト

前進用に打ちまっくってボルトラダーを構築する時代から時間がたち、ナチュラルプロテクション主流の現代において、ボルトは本当の意味で最後の手段である。
人跡未踏の壁でなければ使用はご法度、環境破壊の極悪非道の行為となるのは寂しい。
写真にあるのはあごが付いたRCCボルト、この他にリングボルトがあるが強度が弱く、大きな墜落ではリングが切れる可能性が大きく、あまり好まれていない。
RCCボルトの強度はリングボルトの3倍近くあると言われ、あごをきちんと壁に利かせた場合、ほぼ信頼に応えてくれるだろう。
もちろん、エキスパンデイングボルトであるから、あけた穴の深さと楔を目測で計算し、正しくハンマーで打ち込まなければならない。
最後に使用したのはいつか記憶にないが2023年に売却してしまった。
    シシャモナイ海岸クレイジイルート 懸垂のためのアンカー打ち
4 門田ピッケルとダブルアックス

札幌門田廃業6年後の1992年(平成4年)門田 正氏が他界し、手打鍛造は終了。山内ピッケルとならんで日本を代表するピッケルであり、山屋の魂を象徴していた。
シャフトは写真のようなアルミではなく、木製が主流、重かった。
ダブルアックスが出現した頃、すれ違うように消えていったのは時代の流れで仕方がないだろう。写真のは65cmを50cmに切り詰め、いまだに何の不便もなく使える。
しかし、時代は魂を必要とせず、機能優先となり、人に選るが信じられないようなクライミングを可能とした。
30年ぶりにアイスクライミングを始めたのだが、道具の進化は極めて速い。
カジタ、カンプのセミチューブ、シャルレボワバンなど使い倒しても少しもうまくならず、お前が下手なのは道具のせいではなく、腕が悪いからだと言われてしまったことを思い出した。
                羊蹄山9合目付近
 
5 ブラックダイヤモンド バイパーアッズ、ハンマー
 

2018年ブラックダイヤモンドのバイパーをアッズとハンマーセットを手にし、ブレードを研ぎまくってブラッシュアップした。
これでバリバリ登りまくるぞと臨んだ氷は厳しかった。
スポーツのどの世界でも、もと経験者がバリバリすぐできるほど甘くないのと同じで、バーチカルは苦戦した。氷は道具だと、誰かに言われて鵜呑みした私はバカであった。
氷の世界もやはり、パワーとテクニックが有って初めて道具が役に立つ。当たり前を知らされたのだ。

自己融着テープを巻いて、さも実戦を積んだふりをしていたアックスたちは、持ち主のやる気のなさから2021年オークションで売却してしまった。
人間とは勝手なもので、使い切れない道具は無駄と分かっていても無くなると寂しくなる。
アイスを再開するかどうか先の見通しもないまま、2024年再びオークションでエーデリッドRIOTアッズ、ハンマー新品を買ってしまった。冬のアルパインで使うとの気持ちなのだが、自分でも本当かの疑問がわく。

        エーデリッド RIOTアッヅ ハンマー
 
冬のクライミングから遠ざかり、アイスクライミングもアックスを売却して以来行っていない。もう冬は、スノーシューでのハイキングしか出来ないのかと一抹の寂しさを覚えた時、ヤフーオークションにてエーデリッドRIOTアッズ、ハンマーを見つけてしまった。
その以前から、買うという意思を持たずオークションやメルカリを眺めていたのだが、新品はもとより中古でも非常に高いことに気がついた。
ブラックダイヤモンドのバイパーのセットが、正規の場合二本で¥80,960なのだ!
2018年に購入した時は¥50,000であったので、なんと60%の値上がりだ。
改めてほかの登山用品を見てみると、値上がりしているものが非常に多いことに気がついた。ことに輸入品が多い登山靴、ジャケット類、クライミングギアでは顕著である。
 円が1ドル160円の為替では仕方がないとはいうものの、支給される給与が数十年上がらない日本国民にとって山遊びは上級国民のみの遊びになってしまうのだろうか?
 
エーデリッドRIOTアッズ、ハンマーに話が戻るが、2024年1月オークションで発見したのだが二本で¥39,800と新品であるにもかかわらずリーズナブルだ。
しかし、エーデリッドRIOTなど聞いたことも、見たこともない。
ネットで調べてみると相当前から正規に輸入され、型番も新しい。
グリップにフィンガーレストもついているし、ピックの形状もシャフトもアイスクライミング用だ。ペツルのクオークやノミック、カンプのXドリームとは比べるべくもないが
簡単なリッジクライミングであれば何の問題はないだろうと落札した。
バイパーではスイベルリーシュを¥10,000ほどで買ったのだが、今回はなんとDCMホーマックにて電動工具落下防止のリーシュ¥1,200を発見、耐荷重5kgと許容範囲だ。
人に見られるとちょっと恥ずかしいのだが、老人ゆえに仕方がないと思われるだろう。シャフトに自己融着テープを張ったら立派な武器に変身だ。
はたして2025年冬に活躍できるだろうか?それとも部屋の飾りになりはててしまうだろうか。
6 ツエルト新旧

アルパインクライミングにおいて、重たいテントではとても無理なので夏はツエルト、冬は雪洞にツエルトとなる。
ゴアテックスツエルトであっても、ストーブを焚くと結露を避けることが出来ず、しずくが垂れまくり濡れてしまう。
であれば、軽いただのナイロンツエルトでもいいかとなる。
左が古い650g,右があたらしい280gと新旧で相当の開きがあるのは、やはりハイテクの時代だろうか。ただ、きわめて薄いので、強風下では破られないように気をつけなければならない。 下の写真はかつて雄鉾岳へクライミングに行ったとき、上のツエルトを張ったのだが、大雪が降り何回も潰れてひどい目に遭った。

しかしながら、最近のウルトラライトテントはシングルで800g,ダブルウオールでも1000g程度と飛躍的に軽くなっている。
一昔前のツエルトとさほど変わらない点で再び何を持つかで悩んでしまう。
7 アナログ高度計
 
ここにあるアナログ高度計は、実は三年前に買ったばかりの新しいものであるが、店に並んでいるのを見たとき、ブランド名以外、初めて買った30年前と全く変わっていないことに驚いた。
アネロイドタイプなので進化は止まったままだが、0m~5000mまで計測できる機能は20m単位で読み取れ、ハンデイGPSと地図を見ながら確認してみたがほぼ正確。
最大の特徴は何んといても価格が\3,000と安いことにある。
気圧の変化を利用する為、現在地が変わらなければ、天候の悪化を予想できるので便利。
重量も62gと軽い。 SUUNTOのVECTORも持っているのだが、電池が1年程度しか持たないのは、とても煩わしい。使おうとしたら画面表示が消えている。交換セットは高いし、細い手首に幅けるし、そんなわけでVECTORは諦めた。


代わりといっては何だが、今はDCMホーマックで買ったシチズンのソーラー充電アナログ時計をフルに活用している。高度もコンパスも気圧の変化も何もわからない。
充電式なので煩わしい電池交換が要らないし、小型なので腕にぴったりだ。
たとえどこかで紛失したとしても、なにせ¥2,980と超リーズナブルなのだから気にならない。とはいえ買ってからもう8年を越えても毎日使えているのだから凄い!

8 ワイルドカントリーフレンズ

1975年過ぎにワイルドカントリーフレンズが発明され、木のくさび(赤岩や芦別岳夫婦岩に最近まで本当に見かけた)やヘキセントリックスではなく、クラックにおいてナチュラルプロテクションとして使用されるようになった。
ナッツのようにセットしても、上昇するにつれて外れることもなく、クラックに適応する可動範囲も大きいのは難しいルートを可能とした(あくまで一般例)
ギアとして完璧見えたが、棒状の軸が水平クラックにおいてフレキシブルさに欠けるという弱点もあり、いつの間にかキャメロットやエイリアン等に置き換わった。
それでも、カムのパイオニアとしてのフレンズは忘れられることはないだろう。自分も
10年前まで使っていたが、冷たい視線を背中に感じるようになり、全てキャメロットに。
     時代はすでにC4に変わっているが、これらはまだ使える
9 ヘリテイジ ヘルメットとペツル

ヘリテイジと言えばエスパースを思い浮かべるが、その昔ヘルメットも作っていたのはあまり知られていない。
一般的なガリビエールよりもリーズナブルな為、貧乏な私はこれしか買えなかった。
重量440gの重いディープブルーの美しい塗装は、数々の落石から頭を守ってくれた為、傷だらけになってしまい引退となった。
思えば当時のヘルメットの内側にはクッション類は全く張ってなく、色が白だとガテン系建設業仕様に見えるシンプルなもの。
カラフルで、軽量な現在の新しいタイプは、ハイブリッドのものではペツル225g
の超軽量になり、ずいぶん格好がよくなった。

10 エイト環とルベルソ


エイト環とATCとは、両者ともビレイと懸垂下降に用いるが、今日現在圧倒的にATCタイプの確保器が使われている。
エイト環の方が懸垂下降のとき、異径のダブルロープを使って下降できる、放熱に優れている(早く降りるとエイト環が熱くて触れない!)がダブルロープで確保する場合、スムーズに送りずらい。
ロープが凍っていると、スピードが出すぎてコントロールが難しいし、少し重い。
懸垂時ロープがキンクしてしまう事や、服などのひらひらしたものを巻き込む可能性があるなどの弱点を持つ。
反対に、ATCのメリットはブレーキ力が強く、確保しやすいし軽い。
ただし、ロープ自体の荷重が小さくなる下降終了近くではスピードが出すぎるので、注意はやはり必要だ。 

フリークライミングではグリグリなどのタイプも使われているが、汎用性ではシンプルなガイド型ATCのルベルソがすぐれていると考えている。
フォローの確保はガイド型ATCが他の何物より優れていることより、エイト環は休眠状態のままだが、ずいぶん長い間お世話になったので愛着はある。
もっとも、正しく使用すれば危険なわけではないが、世の中は進化しているというわけだ。
初めてガイド型ATCを見たときは時代が変わった、と心から思った。

 いくら優れていても落としたら終りだから、少なくてもムンターヒッチを覚えておき、非常時に慌てることなく使えなければならないのは言うまでもない。